花言葉と花で 20 のお題
 
 
 
 
 
16  ジキタリス
 
 
 
「持っていくか?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 問われて差し出されたのは、紅紫と白い小さな花が鈴なりとなった草で、この時期となるとよく見かける花であった。
 可愛らしい装いに反し、生命力が強い。育成はそう難しくなく、自生して繁殖していくこともあると聞いた。
「・・・・庭にゃ、なかったよな?」
「ああ、うちでは育てていない。ご近所の方から頂いた」
「へぇ。それにしちゃ、結構な量じゃねぇ?」
 手塚の部屋には不似合いな花の群れ。どこから掘り起こしてきたのか、この部屋の中だけでも花瓶が3つ飾られていた。
 その全てに活けられているのがジキタリス。なかなか壮観かもしれない。
「丁寧に育てていたらしく、今年はかなりの花が開いたそうだ。ただ、娘さんと一緒に暮らす事になったらしくてな」
「は、ん。何となくわかったぜ」
「それだけで判断できるのか。さすがだな」
「言葉のキーワードを手繰っていきゃ、どうってこたぁねぇさ。ジキタリスは観賞用の花として広く伝わってるが、その毒性の強さも有名だ。その娘、コブ付きなんだろ?子供が誤まって口にしねぇよう、処分したってところじゃねぇ?」
「その推察で間違いはない。幼い子には、少量であっても大変なことになる。危険を避けた方が良い」
「まぁな。ガキなんざ、何しでかすかわからねぇしな」
「跡部のようなものだな」
「あぁん?俺様がガキだとても言いてぇのか?」
 手塚の言葉に跡部は目を剥いた。生まれた日も近く、年齢に似合わず大人びた二人である。実際年齢的なところからいけば、子供に分類しておかしくはないが、手塚に子供扱いされるというのが跡部には気に入らない。
「そういう意味ではないんだ。言葉が足りなかったな」
「てめぇはいつでも言葉が足りねぇよ」
「・・・・・・・・油断せずにいく」
「ばぁか。いつもしてねぇだろうが。それでそのザマなんだから、救いようがねぇと思っとけ。素直に詫び入れときゃいいんだよ」
「ところどころ気に入らない発言が紛れていたが、一応詫びておく」
「どこが詫びてんだかよ。で、何が言いたかったんだ?」
「ああ。跡部が子供っぽいというわけではなく、ただ何をしでかすかわからないという面で似ている、と」
「・・・・・・・・結局失礼には変わらないじゃねぇかよ」
「そうか?それではこの花を見て跡部を思い出すというのも、控えた方が良い発言なのだろうか」
「さぁな。根拠を言ってみな。それで判断してやる」
「相反する印象というものが、な。熱情と不誠実。聖母マリアの手袋と魔女の手袋。全く正反対ではないか?」
「根底のところは一緒ってことだろ。つまりてめぇは、俺様を掴みきっていねぇって事か」
「生憎だがそういう事になるのだろう。一生掴めないのではないかとも思えるが」
「・・・・・考えすぎなんだよ、てめぇはよ。もっと単純にな意味で差し出してきたらどうだ?それだったら口説かれてると思えなくもねぇぜ?」
「【君はただ美しいだけ】、か。それはないな」
「アァ?」
「お前は美しいだけ、ではないだろう。美しいという形容は誤りではないが」
「・・・・・・・・は。手塚にしちゃ、上等」
「?」
 作為なく言ったが為に、手塚は跡部が大層機嫌良く笑い声を立てた理由に思い至らないのだった。
 
 
 

「君はただ美しいだけ」...ジキタリス  2006.10.13
 
 
 
 
 
 
 
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