5.今日も授業が6時間でその後部活です。
 
 
 
 黙々と歩き進み、いつもの如く会話は無い。
 その沈黙は跡部にとって馴れたもので、居心地の悪いものではないけれど、こいつはどうなんだろうな?と、ふと思う。
 ちらりと背後を透かし見れば、樺地は一歩引いた位置にて付き従う。この配置は定番だけれど、端から見れば不可思議にも見えるようだ。 時に従者か下僕のようだ陰口を叩かれる事もある。
 駅に着くと通勤ラッシュには少し早いけれど、なかなかの混雑ぶりで一体何処から人が溢れてくるのだろうかとうんざりもする。
 背後に付き従う見上げるような長身の樺地による威圧感と、圧倒的とも言える跡部のオーラ故に人は自然と道を開ける。 颯爽と歩く跡部はそれが日常であるとも言えるので、周囲のそんな反応をいちいち気に止める事もない。
 車両を待つ間、樺地の影が跡部を覆う。跡部には無い肩からかけた荷物も影に映る。ほんの少し前までは、それは樺地の両肩にあった。
「今日のスケジュールは?」
 
今日も授業が6時間で、その後部活です
 
「ふ、ん。授業数、少ねぇ方が良いと思ってるだろ」
「‥‥そうでも、ないです」
「選択科目が多いっても、総時間数は変わらねぇからな。俺は、一日テニス三昧でも良いと思ってたぜ?」
「 ・・・・一日、居ても・・・・跡部、さんが‥いません」
「樺地」
「顔を出して欲しいと、思います。――鳳も、日吉も、そう、言ってました」
「・・・・・・・・」
 寡黙な樺地が珍しくよく喋る。それだけに詰まっているという事なのだろうか。跡部は部を引退してより、樺地と顔を会わせるのはこういった登下校時ぐらいとなっている。 生徒会の業務が忙しいというのもあるが、敢えて部から身を遠ざけているという面もある。 強すぎる自らの影響力を理解しているので、新生テニス部は自分という色を早く消す必要があると思っているからだ。
「鳳はともかくな、日吉の奴がんな事言うかね」
「口には出しませんが、気持ちは同じです」
「んな可愛げ、以前は見た事ねぇな?」
 にやりと笑みを向けると、樺地の顔が少しだけ緩んで見えた。
 
 



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