■ dustbin ■
 
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■ happy birthday !!   (DATE:2006/09/29) 
 
 
 
 
 
 
 
 
 長い付き合いだから、今更改まって祝いなんかする関係じゃねぇ。
 特に去年なんかは、部長と部員という立場もあったから馴れ合ってなんかいられねぇと、「プレゼントなんかいらねーからな」なんて突っ張った。今振り返ってみると、激ダサだよなーと思えちまうが。
 跡部を中心に俺達氷帝学園は、最強のチームになった。最終的な結果は全国大会8位という戦績だったが、一年、二年も含め、俺達の中でそれを恥じる奴はいねぇ。
 あの試合の後、誰一人として先に帰る事の無かった俺達は、全員で病室から出てきた跡部を出迎えた。
 倒れた事が嘘のように毅然とした足取りで、まっすぐ前だけを見詰めて中央を歩いていく跡部に、誰が合図したわけでもないのに皆声を揃えて一斉に、「ありがとうございましたっ!!」とでかい声で叫んだんだ。建物を揺るがす程のでけぇ音量に、何が起きたのかと様子を見に来た医者や警備スタッフ達は、全員呆気に取られたように俺達を見ていた。
 何せあれだ。殆どの奴等が盛大に号泣していたからだろうな。特に長太郎の泣きっぷりったら無かったぜ。
 跡部は悠然と、周囲の喧騒を気にした風もなく歩いていたが、門を出る寸前にぴたりと足を止めた。感情の失せたような冷めた表情で、静かに立つ跡部だったが、その背を見ていりゃわかる。あいつが照れている事ぐらい、な。
 いつものあいつならば、樺地に「行くぞ」とだけ声をかけて行っちまう筈だった。だけどその時は、ゆっくりと俺達を見回すように視線を向けて、誰に対してでなく「――帰るぞ」と言ったんだ。あんな柔らかい笑みを浮かべた跡部の顔、レギュの俺達以外じゃ多分初めて目にしただろうぜ。
 夏休みが終わり、9月に入って授業が始まれば、過ぎていく日々の中に全国大会の熱なんざすぐに薄れていった。
 この9月から10月にかけては、不思議と仲間内で誕生日が重なっている。岳人と筆頭に、俺がきて、跡部がきて、忍足がくる。去年は新しい体制となったテニス部のトレーニングに追われて(特に跡部が組んだ新メニューが厳しいなんてもんじゃなかった)、殆ど祝い事なんかやらなかったんだけどよ、今年は暇になったって事もあって岳人の誕生日は馬鹿騒ぎみてーな状態になった。
 俺の誕生日もまず似たような状況になんだろーな、と予測できる。数日前から何か企んでるような気配も感じるしな。
 で、俺は先手を打つ事にした。
 
「跡部」
「んだよ」
「俺、プレゼントはいらねーぜ?」
「・・・・・・貰えると思っていやがったのか。ずうずうしい奴だぜ」
 はっと軽い嘲笑のような笑みを浮かべた跡部に煽られて、突っかかるような真似はしねぇ。こいつが何も考えてないなんて、思っちゃいねーからな。
「おお。思ってるぜ。欲しいものがあんだよ。金のかかんねーモンだけどな」
「――へぇ。てめーにしちゃ、含みのある言い方じゃねぇか。聞くだけは聞いてやるから言ってみな」
「かなえてくれんだろ?」
「・・・・ちっ。宍戸の癖に下手な知恵つけてきやがって」
「俺の癖にって何だよ。ま、いーや。当日、言うからな」
「せいぜい楽しみにしてやるよ」
 じゃぁな、と肩越しに言う跡部の背に、俺は心の中で「覚悟しとけよ」と呟いた。
 
 
 
 そして今日が俺の誕生日だ。
 いつになく早く登校した俺は、部を引退しても変わらず早い時間に来ている跡部を校門前で捕まえ、まだ誰も居ない部室の方へと引っ張っていった。
 
 
「――おい」
「まだ奴等が来るまで時間あんだろ」
「ちっ。一体何のつもりだ」
「誕生日祝いを貰うつもりに決まってんだろ」
「・・・・・・・・ったく、何考えていやがんだか」
 
 呆れた表情を浮かべる跡部を前に、俺はすぅと息を吸い込んだ。
 他の誰でも駄目だろう。甘いって点なら、跡部はジローや樺地にとことん甘い。だが、あいつらが同じ事を言っても、跡部は「我がまま言ってんじゃねーよ」とか抜かして、首を縦には振らない。これは、俺にしか言えない事だ。
 
「――来年も、一緒に全国行こうぜ」
「・・・・・・・・・・・・」
「俺達は来年も一緒だ。てめーが、俺達の部長、なんだからな」
「・・・・・・・・それが、誕生祝いかよ」
「ああ、今俺が一番欲しい、誕生日のプレゼントだな」
 
 低い、静かな声だった。その内にどんな感情がめぐっていたかはわからない。跡部がいろいろな不自由を強いられているのは知っている。今まで以上にがんじがらめになるんだろうって事もわかっている。だけど、今日は俺の誕生日だ。誕生日って奴は、我がままを言っていいもんだろう?
 
「・・・・・・・・・はっ。何が金がかからねぇ、なんだか。とんでもなく高ぇ願い事じゃねぇか」
 
 長い沈黙の後に、跡部はそう言った。駄々に呆れたかのように・・・・・その癖、仕方ねぇなとでもいうかのように。
 それは、ジローに向けられる表情に似ていて、けれども違う俺にだけ向けられる跡部の顔だった。
 
 
 
 
宍戸はぴば文