■ dustbin ■
 
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■ poison poison      (DATE:2006/03/24) 
 
 
 
 
 
「『真田景吾』。良い響きじゃないか」
 正に御満悦といった表情で、真田が頷く。
 ――となれば、もう一方の人物とても黙ってはいられない。
「そんなわけがなかろう。『手塚景吾』の方が良い。なあ跡部?」
 いつもながらの仏頂面を更に不機嫌そうに歪めて、けれどもその薄い口から放たれたのは、お堅い青学部長には不似合いな色ボケ台詞。
 だがしかしされど残念ながら、その思いが向けられた人物にだけは通じていない。
 周囲の者からすれば解り易い程に解り易いアピールを真田と手塚の二人から向けられている跡部であるのだが、お得意のインサイト(眼力)もこの時ばかりは永久不発弾とばかりに、全く作用も起動すらしない。ただ自分を差し置いて、真田と手塚の二人がいがみ合っているように感じているのだから、つくづく報われぬ二人であるのかもしれない。
 
「何の話だよ。俺様は跡部景吾だ。それ以外にはならねぇ」
 自信たっぷりに言い放つ跡部の言葉は、意味を深く考えての事ではなかった。ただ「名が変わる」という言葉にのみの反応だ。
「む。入り婿という事か」
「跡部がそう望むのならば『跡部国光』となるのも良いだろう」
「いや。『跡部弦一郎』だ」
 再び火花を散らしかけた二人に、跡部が呆れたような表情で水を差した。
「はぁ?てめーらみたいな老け顔養子にできっかよ」
「顔は関係なかろう」
「そうだ跡部。お前とて年相応とは言いがたいぞ」
 さすがにこの時ばかりは真田も手塚も共同戦線。確かに年より上に見られる二人であるが、その事を気にしていないというわけではないのだ。いやむしろ、密かに傷つく時もある。何しろ、学生服と着ていても、学校指定の制服を着ていても、自分なりには少年らしい服装である私服を着こんでいても、成人と見られてしまうのが一度や二度ではないとくれば、これは少々気にもしよう。
 が、そんな二人に跡部は委細構わず続けてくる。相手によっては細やかな気遣いを向ける跡部であるが、この二人においては無用と判断している為だ。
「はっ甘ぇな。俺様みたいのはな、大人びている、ってんだよ。老け顔のてめーらと一緒にすんな」
「・・・・・・また言ったな」
「・・・・・・跡部は口が達者な所も魅力だが、程度があるな」
「うむ。時には思い知る事も必要だろう」
「な、なんだよ」
 不穏な気配を発しつつある二人に跡部の警戒センサーが発動した。このままここに居ては危険だ―――と、その意味はわからぬながらも。本能的な回避要求により逃げを打とうとしのたのだが、その跡部の肩を真田の力強い手ががしりと掴む。
「――――囀りが過ぎる口は塞ぐ必要があるという事だ」
「真田っ!」
 肩に食い込む痛みに跡部は真田に非難の視線を向けるが、帽子の影から覗く真田の目は据わりに据わって意に介さない。
「上の口を真田が塞ぐのならば俺は下の口だな」
「手塚っ?!」
 思わず助けを求めようとした手塚すらもやはりそれは同様で、眼鏡の奥の冷えた視線に威竦まされ、得意の筈のインサイトで逆に検分されているような気分となった。手塚の鋭い視線がまるで跡部を分解するかのように、じっと見据えてきたからだ。
「待て。それは公平ではなかろう」
「意見を翻すのか?立海の真田ともあろう者が」
「―――む、この場は仕方あるまいか」
 手塚にそう言われては、真田としても引くしかなかった。不承不承ではあるが。だが、間に挟まれた跡部にすればそうはいかない。何やら不穏過ぎる空気(あの手の口論はいつもの事であるのに)に戸惑いながらも、このまま二人のさせるままにしていては不味い・・・・という事だけは感じ取っていた。
「って待てよお前ら!」
 暴れて身を捩る跡部だが、真田の手に拘束されている為に身動きできない。
「口は災いの元という事だ。体に思い知らせてやる」
「―――――ち」
 スポーツ全般に関わらず、喧嘩の腕っぷしもそれなりに実践と経験を積んでいる跡部であるが、一人一人でも厄介だというのにこの二人が揃ってとなると、不利だと判断できる。自力で逃げる事がかなわない今、跡部には手助けが必要だった。
「樺地君を呼んでも無駄だぞ」
 冷静に指摘してくる相手に、鼻で笑って返す。手塚に言われるまでもなく、可愛い後輩である樺地をこんな二人に差し向けようなどとは思ってもいない跡部だった。
「はってめぇら二人相手じゃ樺地にゃ荷が重い」
 息を吐き、一拍置いた跡部が声を張り上げ助けを求めたのは―――――
 
「―――――――幸村っ!不二っ!助けてくれっ!」
 
 最強と名高いラスボスこと立海の幸村精市と、魔王とも影で称される青学の不二周助の二人であった。
 
「なっ!」
「卑怯な」
「呼んだ?」
「ふふ」
 
 唖然絶句呆然とする真田と手塚の二人の前に、一体どこから沸いて出たのか、にこやかな微笑みをたたえた不二と幸村の二人が現れる。全く気配を感じ取る事ができなかった真田と手塚の二人は、背につつと流れる汗を感じていた。
 穏やかな笑みを浮かべながら、けれどもその目は全く笑っておらず、妙に迫力がある。その視線を向けられた真田は、操られるかのように跡部の肩から手を離す。
 その隙を見逃す事なく跡部はさっと身を翻し、幸村と不二の背後に隠れるかのように後ろに回った。ここなれば安全―――これも本能的な回避行動なのであった。
 
 
 
 
某所に投稿用より没った小ネタ