■ dustbin ■
 
CLOSE / BACK
■ 使用前・使用後       (DATE:2005/11/1) 
 
 
 
 選抜合宿から戻ってきた跡部は上機嫌だった。
 力あるライバル達と凌ぎを削ってきた事で、何かをまた殺ぎ落としてきた感がある。青学の手塚こそ参加しなかったようだが全国でも選りすぐりの選手達は跡部を十分満足させたようだった。
 まだ2年生でありながら、跡部は氷帝を代表するプレーヤーだ。いや1年生の折よりその実力は部内ど並ぶ者の無い程であった。ただし氷帝の慣習から一年生というものは下積みと決まっており跡部が頭角を表したのは新人戦の頃からであったという。
 まだ体も出来上がっていない細っこい体躯であった為、跡部の実力がいかほどであるか見誤っていたという。あの榊監督が自らそう言っていた。跡部の性格からいって侮られる事を良しとしたとも思えず、最初からあの破天荒な俺様節でがしがしいったのかと思いきや、最初は随分とおとなしかったそうだ。猫被りにも程がある。今の姿を見てしまうと嘘寒さすら感じられる。確かに見てくれは大層可愛らしかったかもしれないが(こっそり宍戸に当時の写真を見せて貰った限りでは実際詐欺だと思う。あんな可愛らしい子があんなになるなんてー物悲しくなってしまうではないか)。上級生にえらく人気ったったとか――まぁ想像に難くはない。
 礼儀正しく慎ましく(・・・・吹き出すのを堪えるのがかなりきつい)大人し気な絶世の美少年。まるで物語の人物が体現したかのように感じていたらしい。当時の氷帝の生徒・・・・教師達も。
 しかしその幻想(いや見事なまでのあやかしだ)はたった半年程で脆くも崩れさる事になるらしい。夏を境に跡部が本性を曝け出したからだ。
 当時の在校生(教員含む)達にいたく同情の気持ちを抱く忍足であった。‥‥その猫被り跡部なるものに好奇心は誘われるが、君子危うきに近寄らずという明言があるように、関わらずにいた事に幸福を感じるべきだろう。とても心臓に悪そうな気もする事であるし。
 本性を出した跡部は先輩達にも容赦なかったらしい。公式戦こそS3でようやくお目見えという事だったらしいが、実際はS1を張ってもおかしくなかっただろう。負け知らずではあったもののデビューが遅かった事もあって一年の当時は跡部の容姿の方が評判が先だってその実力は正当に評価されていなかったようだ。
「歯痒い、思わんかったん?」
「別に。出る杭は打たれるを地でいきそうだったからな」
「意外やわ。跡部が保身考えるとは」
「下手打って後まで 響くような怪我したかねぇだろ。最初は様子見してたんだが‥‥うんざりしたもんだぜ」
 跡部は中学に入るまでは英国に居たという。色々あって、中学からはこちら(日本)に戻る事となったそうだ。
「もったの半年やん」
「――背もそれなりに伸びたからな。抑えこまれて泣きを見るような貧弱な体格じゃぁ、鼻っ柱が強いだけで話になんねぇだろ」
「そないに酷かったん?」
「‥‥たいしたこっちゃねぇよ。今となっちゃな」
「跡部、襲われへんかった?」
「んなヘマすっかよ。あまりにひでぇから転校も考えたが、あんな馬鹿どもに追い出されるようでそれも胸糞悪ぃからな。――自滅して貰った」
「そら陥れた、言いまへんかー?」
「てめぇが起こした不始末の責任とったんだから、『自滅』だろ?」
「はは。そうとも言えるんかな。――手伝えなくて堪忍」
「てめぇはいつも遅ぇんだよ。‥‥一年も遅れてきやがって」
「遅すぎやないやろ?」
「ま、ぎりぎりだな。これから存分に使ってやるから、覚悟しろよ?」
「かなんなー跡部、人使い荒いから怖くてたまらへんわ」
「ふん」