■ 平行世界 (DATE:2005/10/27)
ぐしゃりと、潰れる音がした。
鮮血が飛び散る。夏の花火のように、盛大に。
手塚を救う為に・・・・跡部の右腕が潰れた。
「言っておくが、下手な罪悪感抱くんじゃねーぞ。んなザマ見せたら・・ぶん殴る」
「―――跡部」
「その状態でまだ君は強がりを言うんだね」
「別に。利き腕じゃねぇがどっちも使える。殴る分には問題ねぇな」
「あるやろ、阿呆。何で跡部がっ!」
「贖罪とでも思うならそれこそお門違いだぜ?躊躇する方がおかしいんじゃねぇ?」
「普通は躊躇うものだよ」
「はっ!それなら俺は余程の馬鹿か、思い切りが良すきるんだろうよ」
「・・・・・・跡部は気にするなというが、それは無理だ。一生をかけて償っても足りない」
「阿呆か、てめぇ。迷惑だってんだよ。いつも通りの白けた面してやがれ。たかだか2年、3年、引退が早まっただけだ」
「跡部さん?」
「いつかプロの舞台でっつったな、越前。悪ぃがどっちにしろ無理だった」
「跡部先輩?どういう・・?」
「プロ目指してんだったら、留学してたぜ?」
「家の都合という事かい?」
「そのままだな。俺は責任を放置できない。籠の中の自由を納得した」
「あんたらしくないじゃん。戦わずに逃げるなんて」
「戦いの場はあの狭いコートの中だけじゃねぇ。はっ!つっても完全に納得してたわけじゃなかった。――だが・・・・仕方ねぇよな。実はあの爺の呪いじゃねぇのか?」
茶化すように軽口を叩く跡部にも強張りきった空気が和らぐ事はない。希代のプレーヤーである跡部を喪うという事は、それだけ衝撃であるのだ。例え未だ帰る術を持たずにいても。
「――俺は、入院中、何度も試合をする夢を見た。跡部とも何度も対決したよ」
「雪村、お前が付き合ってくれる気があるんなら、試合ぐらいできんぜ?まずは義手付けるしかねぇけど、な。クローン産業にでも参入すっか。いい被献体もあるし」
「転んでもただでは起きないっスね」
「たりめーだろ。俺は先の先を読むんだよ」
「――それならば俺の事など・・・・」
「手塚ぁっ!」
「!!」
「手塚?!」
悄然と項垂れる手塚に跡部が容赦ない拳を見舞う。まさか跡部が動くとは思っていなかった為、誰も引き止める事がかなわなかった。
青白かった相貌に血が昇り、生気に満ち溢れた跡部の表情は鮮烈なまでに怒りの色を放っていた。
FTもどき。