【携帯電話的恋言葉】 10のお題
 
 
 
 
 
 
 何故これ程までに気になるのか。
 それもわからぬままに脳裏を締めるのはあいつの事で。
 中途半端な別離となってしまったが故に気になるのだろうか。最後通牒を突付けられていれば仕方の無い事だと――そうも思えたのだろうか。
 いや、そうではないと否定する自分が居る。
 誰かに、ただ一人の存在にこれ程囚われるなど、今までに経験せぬ事で――どうしたら良いのか、どうするべきなのか、何もわからなかった。
 ただがむしゃらにテニスに打ち込んでいる間は忘れられる事もできた。意識も飛ぶ程に己を痛め付ける事で、ようやく己を保っていられた。
 その結果・・・・・肘に感じる違和感は、けして無視できるものではない状態へと育って行き、ひた隠しにはしてはいたのだが、大石を欺き通す事はできなかった。
 
「しばらくラケットを持つのは禁止だね」
「しかし」
「手塚もわかっているんだろう?今無理を押し通せば取り換えしのつかない事になるって」
「……」
「体を休めてあげなきゃいけないよ」
「・・・・・軟弱だな」
「そうじゃない。そうじゃないよ、手塚」
 大石の否定する言葉も耳に届かない。ただ悔しくて、そして焦りばかりが心を締める。
「―――Jr.選抜が近いというのに」
「・・・・不参加を竜崎先生から伝えて貰ったよ」
「参加しないとは言っていない」
「医者が駄目だと言っているのに、先生が行かせるわけもないだろう?凄い実力者達が集まるだろうから、手塚が残念に思う気持ちもわかるけどね」
「そんな簡単な話ではない」
 
 残念とか、そんな言葉で済む話ではないのだ。だが大石は、他校の実力者達に心が向いて、こちらの様子には気付かぬようだった。
 
「――他校の奴等も手塚が来るのを期待していただろうなぁ。あぁそうだ、跡部も驚いた顔をしていたし・・・・」
「―――大石っ?!」
「な、なんだい?」
「・・・・今、何と言った・・・・?」
「え、他校の――」
「その後だ」
「――跡部も驚いていた、って事かい?」
「・・・・跡部」
「ああ、氷帝の跡部が何でかって?氷帝の新部長になったとかで挨拶に来ていたんだよ。試合会場でのアレしか知らなかったけど、意外に礼儀正しくてさ、何ていうか世界が違うというか、圧倒されちゃったよ」
「氷帝の――」
「青春学園とは何かと絡む機会が多いからね、それで来てくれたみたいだ。手塚に会うか聞いてみたけど、用事はないと断られちゃったよ」
「・・・・・・」
「今回の手塚の件も、故障の事は話せないけど参加できない事は伝えたんだ。跡部から話して貰う方が変な噂は流れなさそうだしね。あぁ、合宿に参加すれば跡部と親しくなったかもしれないな。いや、それはないかな、はは」
「・・・・・・」
「まぁ、手塚も部長となるのが確定しているし、何かと顔を合わせる機会もあるだろうから、少しは愛想よくすると良いと思うよ。変な雰囲気になるのは手塚のせいもあるんじゃないかな。そうか、本当は手塚が知っておくべきなのかな。跡部の携帯番号を聞いたんだけど――いや、やっぱり勝手に教えるわけにはいかないよな」
「・・・・・・教えてくれ」
 自ら発言を取下げようとしていた大石に、反射的に答えていた。
「手塚?」
「最終的に連絡を取り合うのは俺になるだろう?ちゃんと説明しておく」
「そ、そうかい?」
「・・・・ああ」
「そうか、そうしておこうかな。いや、やっぱりちょっと跡部相手だと俺には荷が重くてさ」
「・・・・・・・・」
 
 大石は苦笑を浮かべながらも、跡部の携帯番号を教えてくれた。
 人の良い大石の性格に付け込んだ感はある。しかし――正攻法ではないが――これであいつに繋がる方法が手に入ったのだ。
 
 跡部は跡部だ。
 根拠など何もないけれど・・・・確信がある。
 
 教えて貰った番号をもう一度確認し、保存する。
 すぐにかけるつもりはない。だがこのささやかな繋がりが・・・・御守りのようにも思えた。
 
 
 
 
(07.伝えるにはまだ早い /一次保存)
 
[ 2007/06/06 ]
 
 
 
 
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