跡部との連絡手段が途絶えた。
電話も、メールも・・・・完全に繋がらなくなってしまった。
最初に気づいたのはメールが届かない事。
もう遅い時間だからと、メールを送信してそのまま眠りについたのだが・・・・目覚めた時に戻ってきたのは送信エラーのメール。
アドレスを間違えたのだろうかと首を捻りもしたが、時間が無かった為に後で確認する事にした。
その日はその後も忙しなく・・・・結局夜まで携帯電話は鞄の中へと仕舞いこんだままで。夜、風呂上りにそういえばと思い出してもう一度メールを送ってみたのだが、結果は朝と同じ事となった。
以前にも、連絡を取れなくなった事はあった。その時は通話が繋がらない状態だったのだが。メールも何通か送ったのだが、返信はなかった。あの時も不安に思ったものだが、それは今の比ではない。
届かずに帰ってきてしまうメール。
送信エラー。
繋がらない電話。
『 現在使われておりません 』
どういう事だと、考えるまでもない事なのだろう。
携帯電話を握り締めた掌に汗が浮く。
跡部は――離れていってしまったのだ。
自分と関わりを持つ事を止めてしまったのだ。
「――すまないな。時間を潰してしまって」
『別に構わえねぇよ。てめぇと話していると退屈しねぇし』
「退屈しない?」
『ああ。面白ぇ』
くっくと、受話器越しに耳を擽るような笑い声が聞こえた。
からかわれているのは明らかであるのに、不思議と腹は立たない。むしろ、初めて言われた言葉に驚きの思いの方が強くて。
つまらない奴だと、頑固で融通が利かない奴だと、言われる事は多かった。手塚は真面目なんだな、と評される事は珍しい事ではなくて、そのたびに、どこか壁のような距離を感じていた。
跡部という男は・・・・最初から笑い飛ばしたてくれたり、時に馬鹿にしたり、時に親身になってくれたり、遠慮のない事この上なかったが、今まで身近に存在したことのなかった跡部という個性にいつしか惹き込まれていた。
本来ならば、苦手なタイプであった筈だろう。けれども、乱雑な言葉の中にある労わりとか・・・・。面倒そうに突き放した物言いながらも、けして最後まで突き放す事のない面倒見の良い所とか・・・・跡部が最初に感じるであろう印象と反した内面を持つ事に、興味が沸いた。
他人に自ら関わる事の無かった自分が、跡部という存在にはもっと歩み寄りたいと・・・・思えた。
今度の休みに会えないだろうか?
そう伝えようとした矢先の事で。
「・・・・・・・・・・」
繋がらぬナンバーをじっと見る。
消してしまうべきなのだと、もう用は成さぬものなのだと、疑うまでもなく理解している事であるのに。
跡部という名が消えてしまうのが、嫌だった。
(06.届かずに帰ってきてしまう /送信エラー)