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光る |
「・・・・・・邪魔なんだが」
「・・・・・・うぜぇ」
一拍おいて間を整えた後、二人の元テニス部部長らがこれまた二人の元部員達へと口にしたのは、存在否定とも取れる言葉だった。はっきり言うなれば、失礼極まりない。
「まぁまぁ。そう難しい顔しないで気楽に構えて」
「せやなぁ。きばらんと、気ぃ緩めた方がええで」
盛大なる顰め面と、氷点下に近く据わった視線を受けてもにこにこと、笑みすら浮かべて交わしてみせるのは、この二人ぐらいしかいないであろう。天才というより天災だ、とぼやいてみせたのは、カリスマ元部長の内一名。もう一名の方も否定する事なく頷いてみせたので、思う所は同じなのか。
手塚の横に座り込んだのは、青春学園の天才こと不二周助。
跡部の隣に座り込んだのは、氷帝学園の天才こと忍足侑士。
何れも劣らぬ曲者――もとい、取り扱い要注意の厄介者である。
まるで待ち合わせしていたが如く跡部と手塚の横に座る二人だが、当然の事ながら約束など交わしていないし、手塚にとっても跡部にとってもどちらもお呼びでない客なのだった。
この週末に川釣りへと行く予定を立てた手塚と跡部は、細かい打ち合わせの為に顔を合わせた方が良いかと、学校帰りに喫茶店にて待ち合わせていただけなのだが。どうやらどちらかが(もしくは両方が)つけられていたらしい。大概暇な奴というか、好奇心が強過ぎて迷惑極まりないというべきなのか。
「忍足よ、随分青学の不二と気が合ってるようじゃねぇか。そっちはそっちで友好温めてりゃいいだろ」
「跡部の意見に同意を求めさせて貰う」
「あはは。嫌だな手塚。そんなに邪険にする事ないじゃないか。君と僕の仲だろう?」
「お。意味深やな」
「・・・・意味もなく思わせぶりな発言は、いつも言っている事だがやめてくれないか」
「別に手塚と不二が親しかろうが、それ以上の仲だろうが知ったこっちゃねぇな。何か揉め事があんなら二人で解決してこいよ」
「・・・・跡部」
面倒だからとっとと帰れとばかりに手を振る跡部に、とばっちりを受けた感の手塚の表情が曇る。この時ばかりは不二と忍足の二人も手塚に哀れみの視線を向けた。
「――んだよ」
「先は長いみたいだね」
「不憫やなぁ」
「同情は不要だ」
「?」
跡部ばかりが意味がわからず、不審気な視線を3人へと向けるが、敢えて聞く程のものではないだろうと判断したようで、一瞬後には疑問も忘れたようだった。
しっかり注文した飲み物が出てきた頃、ようやく不二の方が、招かざる客に半閉口している二人へと本題らしい話題を振る。
「ちょっと、気になる事があってさ」
「聞いたら引き上げるで」
「馬に蹴られたくはないしね」
「・・・・・何処に馬が居るってんだよ」
何かを企んでいるらしいが、内容が掴めないので跡部にはどうしようもなかった。言葉尻を捉えて質問を発しても、どうやら何処かピントの外れた質問なってしまったようで。思うようには答えが返ってこない。
「跡部、お前ちょぉ黙っとれ」
「アァ?さっきから意味わけんねぇ事ばかり抜かしやがって。何が気になるのか知らねぇが、答える必要性も感じないぜ。黙ってろってんなら、それでいいんだな?」
「いや、跡部。ここはこの二人を満足させた方が問題が早く解決すると思う」
忍足の言葉尻を捉えるようにして、会話を終了させようとした跡部に手塚が制止をかける。手塚の言い分も最もであると判断した跡部は、真に嫌そうながらもその提案を受け入れた。
「ちっ。仕方ねぇ。とっととすませろ」
「はいはい。それぞれに聞きたいんやけどな。『光る』言うて、何を連想する?」
「『光る』?」
「『光る』、ねぇ」
何を聞くかと思えば、さほど意味があるようにも思えぬ問い。まぁこの程度ならば、答えてやっても良いか、と内心肩を竦めた跡部は、深く考える事なく口を開いた。正面に座る手塚もまた等しく。
「手塚のデコ」
「跡部の髪」
回答はほぼ同時だった。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
その後訪れた一瞬の沈黙もまた同時。
「・・・・・・・・・・跡部」
「・・・・・・・・・・手塚」
心持ち、文句を言いたげに相手を見る視線もまた似たようなもので。そんな二人を不二と忍足の二人が興味深そうに見る。
「それは随分と失礼な物言いではないか?」
「るせぇなぁ。てめーの面見るたびに思ってたんだよ。国一爺さん見てりゃ、将来はわかるってもんだが、てめーの場合20代でいきそうだよな」
「そんな事はない」
むっとした表情となる手塚と、どこかからかうような表情の跡部。ここらあたりデリケートな問題であるのだが、跡部にとっては手塚をからかう種の一つでしかないようだ。
「まぁまぁ。二人の言いたい事は何となくわかったから。それでもう一つ思い浮かべるなら何かな?」
「同じテーマでかよ」
「もう一つ、か?」
「そうそう」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
にこにこと笑みながら先を促す不二に、手塚と跡部は一瞬視線を混じえ、こうなったらさっさと済ませるか・・・・とばかりに、もう一度脳裏に浮かんだものを口に乗せた。
「―――――手塚の眼鏡」
「―――――跡部の服、か?」
やはり同時に答える二人。相手を批難するかのように視線を向けるタイミングまで似たようなものだった。
「・・・・手塚ぁ。そりゃ、どういう意味だよ」
「言葉どおりだ。お前が好んで着る服は、てらてらと光っているものが多いだろう」
「・・・・んの表現安っぽいんだよ。絹やらサテンてのは光沢があるもんだ」
「皮ものもそのようだな。それより、眼鏡が光るとはどういう意味だ。まるで不審者のようではないか」
「それこそまんまだよ」
微妙に静かなる舌戦に入りだした二人の横で、その火種を放り込んだ筈の二人はそっと抜け出していった。
「別に二人それぞれに関する事で、とは聞いてないのにね」
「仲がよろしくて結構なこっちゃ」
そんな風に笑いながら去る二人の言葉がもし耳に届いていたら。手塚はともかく跡部の方は、盛大なる顰め面で嫌そうに、「違ぇよ!」と叫ぶ事だろう。
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