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稀有 |
気持ちがあれば充分なのだと、友人達は声を揃えて言うけれど。
どうせならば気持ちだけではなく、品物にも喜んで貰える方が良い。特別な日に――誕生日という日に手渡す、特別な相手に渡す、特別な物ならば。
「そんなわけで、考えてみたのだが」
「―――ア?」
手塚の言葉に跡部が読みかけの本から視線を上げた。ソファに寝そべるようにして本を読んでいた為、傍らに立った手塚を見上げるような形になる。その目つきはお世辞にも穏やかとは言い難く、控えめにも友好的とも言い難く、胡乱気で「何抜かしてやがんだ?こいつは?」とでも言わんばかりである。
「跡部に合うのは『ブルーダイヤ』だと思う」
「いきなり洗剤の話か?」
金銀パ〜ル、プ〜レゼント♪
否といえば応というような・・・・即のタイミングで返された跡部の言葉に、手塚の脳裏にその軽やかなフレーズが思い浮かんだとか浮かばなかったとか。
思わぬ回答に、沈鬱な表情(常と変わらぬと誰もが言うかもしれないが)の手塚の肩が僅かに落ちる。
「・・・・・跡部がCMを知っていたとは意外だが」
「てめぇ喧嘩売ってんのか?」
やんならやるぜ?―――と、微妙に機嫌を損ねた事がわかる口調と険ある視線に、手塚は慌てて謝罪と共に訂正する。
「すまない。お前を馬鹿にしたつもりはない」
「ふ、ん?」
「それと、俺が言いたかったのは、金剛石――ダイヤモンドの話だ」
「蒼のダイヤ?」
「ああ。『ブルーダイヤ』という物は稀少なのだろう?最良の中でも稀有な存在・・・・それこそが――」
跡部。お前に相応しいのではないかと思ったんだ。
そう続けようとした手塚の言葉は、跡部によって遮られる。別段手塚の邪魔をしようとしたわけではなく、丁度思いついて思わず声を上げてしまった・・・・そんな感じであった。
「ああ!呪われたダイヤ、『ホープダイヤ』の話だろ?商品価値は計り知れねぇが、幾らウチ(跡部)でも手に入れたいとは思わねぇな。呪いなんざ、好んで招き入れるもんじゃねぇ」
「・・・・・・・・・・・・」
快活な口調で続ける跡部の知識は宝飾品にまで及んでいるらしい。上流階級の生まれであるから、それは嗜みと呼ばれるようなものなのかもしれない。――が、ことごとく意図した方向からずれて行く事には手塚としても文句を挟みたい所である。
「・・・・・・・だからそういう話ではなく・・・・つまりだな、『蒼』という色は稀少とされるものが多いだろう?」
「そうか?何処にでもある色だろ?」
「そんな事はない。跡部の瞳の色のように、深遠を思わすような色合いはそうそうあるものではない」
「―――あ、そ」
「だから、跡部には稀有な『蒼』を思い起こす品をと思ったのだが、生憎とダイヤになど手が届かない」
「わかるんだかわからねぇんだかな話の流れだが・・・・・・つまりは俺にプレゼントをくれるって事か?手塚が?俺に?おいおい冗談だろ?」
「今日は跡部の誕生日だろう?」
半信半疑な態で聞いてきた跡部に、手塚は心外だとばかりの口調で返す。
「・・・・・・・・覚えてたのかよ」
「忘れるわけがないだろう。―――ダイヤとまではいかないが、お前に、お前にこそ合う品だと思い、用意した」
「――――――」
手塚が生真面目な表情で跡部に差し出したのは、目にも鮮やかな色合いの薔薇の花束だった。
「ブルーローズ、ね」
「赤い薔薇も白い薔薇も跡部に似合うとは思うが、これ以上に合う物はないと思ったんだ」
抱えさせられた青い薔薇と手塚とを見比べた跡部は、その対比にくくと笑う。「ありがとよ」と礼を放つも照れはなく、煌く蒼の瞳は悪戯っぽく輝いていた。
「『ブルーローズ』といえば、後漬けの加工物だ。天然もんじゃねぇのが惜しい所だが、ま、手塚にしちゃ上出来じゃねぇの?」
放つ言葉は辛辣に近く評価しているとは言い難いが、手塚にとっては充分ではあった。
「満足か?」
「ああ、満足だ―――――とでも言えって?お前、そういう所を外す奴だな」
「外したのか、俺は」
「本番で外さなきゃいーんじゃねぇの?俺様でシュミレーションしようってのは気に入らねぇが、ま、せいぜい頑張んな」
「・・・・・・・・・・・・・」
激励と取れなくもない跡部の言葉に、手塚は己の真意が全くといって良い程に伝わってない事を思い知る。
敵は・・・・・・・・・・手強い。
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