22: NO    ※ バトテニ (跡部・手塚・リョーマ)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
※ バトロワパロの為人死に話が絡みますので御注意下さい

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「――アンタを出し抜く。これが俺の下克上だ」
 
「生き延びて下さい。―――俺達を恨んで構いませんから」
 
「‥‥なんてぇ顔してんだよ‥・・檄ダサだぜ‥・・はっ‥そりゃ俺か‥・・」
 
「――跡部部長。俺、後悔してません」
 
「あ〜眠くてたまんないや・・・・子守歌、歌ってよ」
 
「‥‥‥後、頼むね」
 
「クソ馬鹿跡部。世話焼かせんな。馬〜鹿っ!」
 
 
 
「お別れや。‥‥悪ぅ無かったで。跡部に会えて、最高やったわ‥‥」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「――――っ!」
 はっと飛び起きる。あまりにリアルな声にその存在を確かめようとして――馬鹿な自分に舌打ちする。
 そんな期待、今更ではないか。希望なんてとうに無くしているというのに。
 絶望をどれだけ噛み締めたのか、今更忘れたというのか。
 荒い息を吐く。額を伝う汗をぐいと拭った。
 板敷きの間に横たわっていた為に体の節々に痛みがある。それでも土の上で眠るよりはマシだっただろうか。土の匂いの中で、あの日々の事を思い出すよりは。
 傍らにはすぅすぅと寝息を立てる越前の姿がある。意思の強いつり目の瞳がこうして閉じられると、年齢相応の幼い顔立ちが目に付いた。 小生意気な青学の一年生。このように傍らに在るなど、かつては思いもよらなかった事だ。
 手塚の気配は近くにない。見張りにでも出ているのだろう。交替制で仮眠を取る事となり、まず最初に見張りにつくと言ったのが手塚だった。 越前と二人で過ごしてきた俺と違い手塚は一人きりで周囲を警戒しながらここまで来た。 だからこそ先に休めと言ったのだが、「考えたい事がある」と言うのでしたいようにさせた。
 それは別段、跡部を信用していないからという事ではない。むしろその反対だ。跡部がプログラムの生き残りだという話を聞いても、こうして越前の側に置く警戒心の無さ。
「テメェら、足元すくわれても知らねぇぜ?」と、簡単に自分を信用する二人を嘲るようにあげつらったのだが、彼らは二人が二人ともそれを撥ね退けた。
 
「跡部を信用できなくなったらお終いだ。他に誰を信じろと?」
「俺、人見る目だけはあるつもりっスから。――手塚先輩と跡部さんだけは何があっても信用します。尊敬はしないかもだけど」
 
 二の句が告げないとはこの事だ。何故こいつらは俺を無条件で信じようとするのか。
 その事を嬉しいと思うよりも‥‥苦しかった。救えなかった、助ける事のできなかった、アイツラの顔がどこまでもちらついてくる。 「生きろ」と彼らが言ったから此処に居る。あの時自らを壊してしまえば―――いや、それはできない。この命はあいつらの犠牲の上に成り立っているのだ。 約束を、果たさなければならない。
 
「――跡部?」
「手塚か。・・・・異常は無いか?」
「今の所はな。もう少し寝ていて構わないぞ」
「もう充分休んだ。中途半端に寝ると却ってきつい。・・・・代わる」
「・・・・出来たら少し話を・・・・良いだろうか」
「休まねぇと持たねぇぜ。禁止エリアになったら此処も出なきゃならねぇしな。それに最後まで隠れているつもりもないんだろ?」
「ああ。あいつらを、探したい」
「・・・・そりゃそうだろうな。向こうも探してんだろうよ。―――んな状況になっても、変わらねぇと思う?」
「変わらない」
「・・・・そうか。ならばお前は最後まで信じれば良い。見極めは、俺がしてやるよ」
「跡部」
「ああ?迷惑かよ」
「そうじゃない。お前は・・・・いいのか?俺達と、で」
「お前らは俺を信用してんだろ?ま、俺がどうかは別として」
「・・・・・・・・」
「最後の決断の時までは、生き延びてぇよな。折角なんだしよ」
「それは俺達と、という事か?」
「他に誰が居んだよ。いつ誰が襲ってくるかわからねぇ状況で、一人で居るのはしんどいだろ?」
「・・・・跡部がそんな弱みをみせるとは思わなかったな」
「ふん」
 手塚の珍しい冗談とも言える言葉に鼻で笑うと、ほっとしたような表情が浮かぶ。僅かではあるが、笑みに近い表情だった。 こいつもかなりギリギリだな、と少しだけ、同情を感じる。
「なぁ」
「何だ?」
「お前の精神力は立派なものだけどよ、護ろうと思うならば、躊躇いを捨てる必要があるぜ?」
「それは俺に乗れという事か?」
「そうそう出来ねぇだろうけどな。一線を超えちまったら、悩むまでもねぇんだけど。ただ、お前がどうあろうとも、すでに乗った奴等が居る。放送で名が呼ばれるというのはそういう事だ」
「・・・・・・・・お前は、乗るのか?」
「ああ?未来系かよ?」
 今更な問いを発する手塚に跡部は小馬鹿にしたような笑いを向ける。何を聞いていたのか、だ。一度プログラムを生き延びた相手に向かって何を言うのか。
「今更か?お前は・・・・部員達を手掛けられるような奴ではないだろう?」
「・・・・・・・・・・」
「そして彼らもお前を傷つける筈がない」
「・・・・・・・・・・」
「俺の言葉は間違っているか?」
「・・・・・・・・・・」
 真摯な瞳が向けられる。全てを見透かすような――――。
「問えば、答えてくれると言ったな。YES・NOで構わない。お前はプログラムに乗ったか?」
「―――――――」
 静かな、静かな問いかけ。
 こく、と咽の奥を唾液が伝った。
 乾いているような、酷く乾いているような―――そしてようやく息ができるような、感覚。
 手塚と視線を合わせたままに、曖昧にする事を良しとしない跡部にしては長い逡巡を経て――跡部は口を開く。
 
 
 
 
 
 
 
「『NO』だ」
 
 
 
 偽りではない、真実の言葉を。
 
 
 
 
[ 2005.09.26 ]